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2026.04.22 | ACTIVITIES

システムデザイン工学科 創設30年記念シンポジウム

2026年度をもちまして、慶應義塾大学理工学部システムデザイン工学科は創設30周年を迎えることとなりました。これを記念し、30周年記念シンポジウムを開催する運びとなりました。

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システムデザイン工学科 創設 30 年記念シンポジウム
羽ばたくシステムデザイン工学  SD2.0 への挑戦!~

開催概要
開催日:2026 3 20 日(金・祝)
・研究展示見学 10:0012:00
 会場:創想館 7 階 フォーラム
・シンポジウム 13:0017:40
 会場:創想館 地下 2 階 マルチメディアルーム

プログラム
13:00  開会の辞 システムデザイン工学科 教授 主任 柿沼 康弘(10 分)
13:10   理工学部長 村上 俊之(10 分)
13:20  特別講演 慶應義塾大学 特任教授・名誉教授 大西 公平(40 分)
14:00  特別講演 慶應義塾大学 名誉教授 菱田 公一(40 分)
休憩
14:55  現役教員によるトークセッション 4 名(各 20 分)
  ・システムデザイン工学科 教授 嘉副
  ・システムデザイン工学科 教授 多田 宗弘
  ・システムデザイン工学科 教授 アルマザン カバジェーロ, ホルヘ
  ・システムデザイン工学科 専任講師 松田 英子
休憩
16:30  卒業生からのメッセージ 3 名(各 20 分)
  ・機械・力学分野
  ・電気・情報分野
  ・建築分野
17:30  閉会の辞(10 分)

・懇親会 18:0019:30
会場:厚生棟 3 階 会議室


 

開会の辞

慶應義塾大学理工学部システムデザイン工学科
学科主任
柿沼 康弘 教授

開会の辞では,システムデザイン工学科主任の柿沼康弘教授より,「きみにはシステムデザインはあるか?」という1996年の創設当時の印象的なメッセージを起点に,学科の理念と発展の歩みが紹介されました.講演では,システムデザイン工学が,自然科学の知見を人工物や社会システムへと実装していく学問であり,「解析」「設計」「調和」の三軸を基盤として,俯瞰的により良いシステムを構想することを目指してきたことが示されました.また,創設時には機械工学科,電気工学科,計測工学科から24名の教員が集い,多くの議論を重ねて学科が形づくられたことが振り返られました.

さらに,2006年には建築や情報分野が加わり,2016年には医工連携や国際性の広がりを取り込み,2026年の現在では半導体や文理融合など,新たな領域へと発展を続けていることが紹介されました.加えて,大学院改組によるSDカリキュラムの整備により,学部から大学院まで一気通貫の研究教育環境が整いつつあること,またSDに閉じることなく,他学科・他学部とも連携したオープンな教育研究体制を構想していることが示されました.今後の中長期ビジョンとしては,SDGsへの貢献を見据えつつ,「解析」「設計」「調和」の三軸,とりわけ調和性を重視し,資源問題や労働力問題などの社会課題に応えるシステムデザイン工学の確立と発展が語られました.

 

祝辞

慶應義塾大学理工学部
学部長
村上 俊之 教授

祝辞では,理工学部長の村上俊之教授より,システムデザイン工学科の創設期を振り返りながら,現在の理工学部の取り組みと今後の展望が紹介されました.講演では,1996年の学科発足当初の教員体制やカリキュラム,2000年の建築系分野の合流によって現在の教育体系が形づくられてきた経緯が語られました.また,合宿や卒業研究要旨集など,学科の歩みを象徴する思い出も交えながら,システムデザイン工学科が培ってきた教育・研究の土台が振り返られました.

さらに後半では,コロナ禍以降のキャンパス環境整備や学生生活支援,理工学部の現在の運営体制,大学院改組による新たな研究ユニット体制,そしてYIL(矢上イノベーションラボ)を核とした産学連携の推進など,理工学部の近況が報告されました.あわせて,ダブルディグリーや企業との連携拠点整備など,研究・教育・国際展開をさらに発展させるための今後の方向性も示されました.

 

特別講演

慶應義塾大学
特任教授・名誉教授
大西 公平 先生

特別講演では,慶應義塾大学特任教授・名誉教授の大西公平先生より,「扉を開けて最初の一歩を踏み出そう」と題して,システムデザイン工学の原点と本質について講演が行われました.講演では,工学の原点は技術の平和利用にあり,人を幸せにするための学問として発展してきたことが示されました.そのうえで,未知の対象を観測して原理原則を見いだす「発見」と,既知の原理を統合して新たな機能を実現する「発明」は工学の両輪であり,それぞれに「解析」と「設計」が対応すること,そして両者を往復しながら社会課題の解決へ向かうことこそがシステムデザインの本質であると語られました.

また,システムデザイン工学の特徴として,社会に積極的に働きかける「能動性」,既存の専門分野にとらわれない「総合性」,そして人間と研究を結びつけるための「アート性」の重要性が示されました.講演後半では,外乱オブザーバの発明,モーションコントロール分野の創生,力触覚伝送技術の実現と標準化,さらに福島の廃炉作業に向けた遠隔操作ロボットの開発など,大西名誉教授ご自身の研究の歩みを通して,失敗を恐れず挑戦し,修正を重ねながら社会実装へとつなげていく姿勢の大切さが語られました.あわせて,教育においては,専門性を深めながら方法論を身につけ,実験に裏打ちされた「根拠のある自信」を育むことの重要性が強調されました.

 

〇 現役教員によるトークセッション

システムデザイン工学科
教授
嘉副 裕 

システムデザイン工学科の嘉副裕教授より,「応用ナノ流体工学の開拓」をテーマに,制御されたナノ空間を創り,その中で流体を操作・計測し,工学応用へと展開する研究について紹介がありました.講演では,ナノ空間では表面の特性が流れや輸送現象を大きく左右すること,さらに光の波長よりも小さな空間で流れを可視化するために,新たな超解像計測技術や粒子追跡法を開発していることが説明されました.また,こうした基礎研究をもとに,1分子操作技術や1細胞分析システム,小型マイクロ流体冷却システムの開発など,医療・分析・半導体分野への応用研究が進められていることも紹介されました.加えて,研究・教育の取り組みとして,「システム計測」や「システムデザイン工学演習」における実践的な教育活動にも触れ,解析・設計・調和の観点から,嘉副教授の研究と教育の中にシステムデザイン工学の広がりがあることが示されました.

 

システムデザイン工学科
教授
多田 宗弘 

システムデザイン工学科の多田宗弘教授より,スタートアップでの実務経験を踏まえた産学連携の考え方,およびYIL(矢上イノベーションラボラトリー)の今後の展開について講演が行われました.  講演では,企業と大学は「ビジネス」と「研究教育」というアプローチの違いはあるものの,「社会への価値提供」を目指す点においては本質的に共通しており,自然な連携が可能であることが示されました.その上で,教員と学生が一体となって企業とつながる新たな産学連携の形や,企業のニーズに応じて研究室同士を横断的かつ柔軟につなぐ仕組みづくりの重要性が紹介されました.

あわせて,YILが進める産学連携アライアンスの構想についても説明がありました.公開イベントを入口として,企業とのネットワーキングや研究ユニットとの連携を促進し,その先の共同研究へと発展させることで,持続的な産学連携のエコシステムを構築することを目指すものです.後半では,多田教授の研究教育ビジョンとして,次世代半導体,エッジAI,GPU冷却技術,量子コンピュータ制御,さらに新材料を用いた次世代トランジスタ開発など,半導体と量子技術の境界領域における先端的な研究プロジェクトが紹介されました.

 

システムデザイン工学科
教授
アルマザン カバジェーロ,ホルヘ 

アルマザン カバジェーロ,ホルヘ教授からは,「SDの基盤と未来:その理念を世界へ」と題して,システムデザイン工学科の創設理念を踏まえながら,これからの国際性のあり方について講演が行われました.講演では,1990年代の学科設立時から,「新しい価値を創造できる人材の育成」や,「総合化・システム化を図れる人材を社会に送り出すこと」が理念として掲げられていたことが紹介されました.さらに,30年前と現在とでは,日本を取り巻く状況が大きく変化しており,人口減少や高齢化の進行,一人当たりGDPの相対的な低下を踏まえた新たな視点が必要であることが示されました.

そのうえで,こうした変化に対応するためには,国内にとどまらず,世界へと活動の場を広げる視点が重要であると述べられました.人口減少を前提とした都市や社会のデザインは,制約として受け入れるだけでなく,海外の事例や発想を学ぶことで新たな可能性を切り拓けることが示されました.また,日本の学生が「内向き」であるという見方に対して,実際には挑戦意欲や国際的な適応力を十分に備えていることが紹介され,むしろその力を引き出すための後押しや環境整備こそが重要であると指摘されました.講演は,創設以来の先進的な理念を継承しながら,その価値を世界へと広げていくことが,これからのSDの大きな使命であるというメッセージで結ばれました.

 

システムデザイン工学科
専任講師
松田 英子 

松田英子専任講師からは,「時空を超えるシステムデザイン工学―調和軸としての共感覚―」と題して,認知身体科学の観点から見たシステムデザイン工学の新たな可能性が紹介されました.講演では,システムデザイン工学の本質である「解析」と「設計」のあいだを行き来する営みを,人が身体を通じて世界に関わり,その中で「意味」を立ち上げていくプロセスとして捉える視点が示されました.そのうえで,「調和」の軸は,技術やシステムが人や環境に対してどのような意味を持つのかを問うものであり,その理解の手がかりとして「共感覚」が取り上げられました.講演では,共感覚の定義や特徴に加え,「音楽」「計算」「文章読解」「工学製品」など多様な題材を通して,人が世界をどのように感じ,そこにどのような意味を見いだしているのかが紹介されました.また,共感覚の研究を通じて,個人に固有の知覚や体験の複雑さを捉え直すことが,人や環境との新たな関係性の理解につながる可能性が示されました.さらに,教育面では,「解析」「設計」「調和」の縮図として位置づけられる「ヒューマンインターフェースデザイン」の講義について紹介があり,認知科学や設計手法を横断しながら,人と技術の関係を考える実践的な学びが展開されていることが示されました.

 

〇 卒業生からのメッセージ

日本電気株式会社
スペースプロダクト統括部
冨岡 孝太

日本電気株式会社 スペースプロダクト統括部の冨岡孝太氏からは,「人工衛星開発とシステムデザイン」と題して,学生時代の研究から現在の人工衛星開発業務に至るまでの歩みと,その中でシステムデザイン工学の学びがどのように活きているかが紹介されました.講演では,慶應義塾大学在学中に取り組んだ宇宙用熱制御材料の研究や,名古屋大学での熱ホール効果のイメージング研究が紹介され,宇宙と熱に関わる研究を軸に専門性を深めてきた経緯が語られました.

続いて,NECにおける宇宙事業の概要とともに,人工衛星がシステム,サブシステム,コンポーネントから成る複雑なシステムであることが説明されました.その中で冨岡氏は,熱制御系(TCS)の開発に従事しており,人工衛星開発では,概念設計,基本設計,詳細設計,維持設計・打上運用という段階的かつ慎重な設計フローが不可欠であることが示されました.特に,熱制御性能をどのように実現するかを見極める基本設計の重要性や,サブシステム間の調整を進める詳細設計,さらに打上後の運用まで,人工衛星開発の実際が具体的に紹介されました.

さらに,宇宙用液浸冷却装置の研究開発にも触れながら,常に新しい技術課題や多様な専門情報に向き合う宇宙開発の現場において,SDで培った論理的思考力,計画力,そして分野を越えて柔軟に対応する姿勢が大きく活きていることが語られました.最後に,これからのSDに対して,物事を順序立てて考え,ロジカルに行動・計画できる人材の育成への期待が述べられました.

 

弁理士法人
IPX アソシエイト
野村 知美 

弁理士法人IPXの野村知美氏からは,「想像力を持ち,自分を信じ,歩み出した,予想もしない道へと」と題して,留学,研究,進路選択,資格取得を通して切り拓いてきた自身の歩みが語られました.講演では,理工学部在学中にフランス留学を志し,ダブルディグリー・プログラムやフランス政府奨学金への挑戦を経て,エコール・サントラル・パリで学んだ経験が紹介されました.厳しい学修環境の中でも,自分を信じて努力を重ねることで道を切り開いてきたことが印象的に語られました.

帰国後は,満倉研究室において,脳波や視線などの生体信号を用いた感情評価の研究に取り組み,多くの学会発表や共同研究を経験しました.その後,博士課程に進学しながら,研究にとどまらず,NPO活動や図書館での業務など,多様な関心に基づく経験を重ね,就職活動を通じて特許事務所という新たな進路と出会い,弁理士という職業へとつながっていきました.

また,弁理士の仕事について,発明を技術的に理解し,それを言葉によって権利として守る専門職であることが説明されました.資格取得の過程では,論文式試験への度重なる挑戦や転職を経験しながらも勉強を続け,最終的に弁理士資格を取得したこと,さらに出産を経て再び弁理士としての道を歩み始めたことが語られました.最後に,SDで培われた多角的な視点,最先端技術への関心,社会の中で人と関わる力,そして主体的に挑戦する姿勢が,現在の仕事に大きく活きていることが示され,自分を信じて一歩を踏み出すことの大切さがメッセージとして伝えられました.

 

国土交通省 住宅局

参事官(建築企画担当)付 課長補佐
田中

国土交通省 住宅局 参事官(建築企画担当)付 課長補佐の田中翔氏からは,「建築・消防行政とシステムデザイン」と題して,消防・建築行政の現場での経験と,そこに活きるシステムデザイン工学の考え方について講演が行われました.講演では,PFASを含む泡消火薬剤の規制を議論した2019年のストックホルム条約締約国会議への出席,首里城火災や能登半島地震への対応,政府広報ラジオへの出演など,印象的な実務経験が紹介されました.現在は,建築基準法やバリアフリー法に関する基準改正や企画立案に携わっていることが説明されました.

講演の中核では,学部4年時に研究室で取り組んだ「対戦型建物制振ゲーム」の開発経験が振り返られました.そこでは,目的の設定から始まり,現状分析,課題の抽出,必要な作業の整理,スケジュールとチーム編成,試行錯誤を重ねた改善,そして完成後の振り返りと反省に至るまで,一連のプロセスを経験したことが紹介されました.田中氏は,この流れこそが「デザイン」そのものであり,何もないところから価値を生み出し,改善を重ねていく営みであると語りました.

さらに,こうしたSDでの経験は行政の仕事にもそのまま通じていることが示されました.火災予防行政における法令改正は,実際に起きた火災の反省から始まり,再発防止という目的を定め,現行制度で防げなかった要因を分析し,課題を特定し,必要な作業を整理しながら,関係者との協議,スケジュール設定,法令改正,施行,フォローアップへと進んでいきます.また,消防法,建築基準法,バリアフリー法では規制や誘導施策の考え方が異なることにも触れながら,学生に対して,目的設定から反省までの一連のサイクルを自ら回す経験を多く積んでほしいこと,そしてAI時代だからこそ,自ら課題を見出し,考え,組み立てる力が重要であることがメッセージとして語られました.

 

閉会の辞

システムデザイン工学科
教授
桂 誠一郎 

閉会の挨拶では,桂誠一郎教授より,参加者,登壇者,卒業生,企業関係者への感謝が述べられるとともに,システムデザイン工学科の今後の発展に向けた決意が示されました.また,慶應義塾に根付く「社中」の精神を礎に,教職員,学生,卒業生がつながりを深めながら,教育・研究・社会実装を一体的に進め,システムデザイン工学を通じて社会に貢献していきたいとの思いが語られました.