−INTERVIEW−
SDを語る【院生編】
慶應義塾大学大学院 理工学研究科
総合デザイン工学専攻 修士1年 蒲谷 実千
やりたいことが
きっと見つかる場所
ー専攻はなんですか?
ロボットの制御を専攻しております。
ー実際、どういうものを作られているんですか?
セグウェイのような二輪の機工を持つ、車いすですね。その安定化制御に関わっております。
ーどのようなことが可能になりますか?
実現しますと、高齢者や障がい者の方も二輪の機工に乗れるようになります。現在、その実用化に向けて研究を続けています。
ー大学入学当初から、この研究をしたいと考えていたのですか?
いえ、実は入学当初は全くそのようなことはなく、むしろ建築の分野に興味がありました。様々な分野の授業を受けていくうち、ロボットの制御というものに非常に興味が湧いてきまして、現在の研究に進みました。
ー高校生の頃から、理工学系に興味は強い方でしたか?
高校生のときは数学がすごく大好きで、私はもう、理系一本で行こうと思っていました。
ー幅広いというと、かなり色々なことを学ぶことになるのですね。
そうですね。必修科目も、2年生のときにかなり広い分野がありまして、そのどれにも興味を持っている人が向いていると思います。
ー学年が進むにつれ、専攻が分かれていきますが、システムデザイン工学科は、色々な専攻と交流・連携しながら研究することがあるとお聞きしました。
実際、全く別の専攻の人に手伝ってもらって何か作るということはあるのですか?
私のいる研究室ではそういうことはあまりありませんが、例えば、作ろうとしているものに、こういうセンサーを使いたい、ということがあれば、その専門の研究室の人へ個人的に聞きに行くような、そういったつながりは学科内では比較的多いかもしれないです。
ー研究室をいくつか見させていただいたのですが、大学4年生と大学院生が、同じ研究室で一緒に研究しているところが多かったように思いました。それは院生が4年生を育てる風習があるのですか?
私の研究室もそうですが、大学院1年生が大学4年生の指導を基本的に行っております。ロボットの制御の基本や、研究発表のプレゼンの仕方ですとか、そのようなことは院生が主に面倒を見ています。
ー大学院生と大学生の仲は良いですか?
はい、仲はかなり良いですね。
ー研究室以外のプライベートでも交流が多いとか。
そうですね。研究室に入ってからは、その学部の4年生と院の1、2年生という、3学年で構成されており、学年を超えてその中で仲良くなることが多いです。
ー蒲谷さんが取り組まれている研究というのは、教授と共同でされているものですか?
普段の実験やロボットを動かす作業は、教授と学生だけでやっています。
ー教授と学生の関わり方はどういった感じですか?
研究にちょっと行き詰ってしまったりとか、こういうデータが取れました、とか、そういうことを教授とお話して、アドバイスをもらうという形で、普段は教授と関わっています。
ー現在取り組まれている研究というのは、必ずしも誰かのものというわけではなく、どんどん引き継いでいっているものなのですか?
はい、私の場合ですと車いすですが、それは何年か前に卒業された先輩がつくられたもので、そのまま私が研究テーマにしたいと思い、引き継いで取り組んでいます。また異なった角度から整理をし、実機の改造も視野に入れて行っております。
ーキャンパスの雰囲気をお聞きしたいのですが、蒲谷さんは一日、どういった感じで生活されていますか?
日によってまちまちなのですが、例えば、午前中に授業がある日ですと、午前中は授業に出て、そのあと研究室に行きます。そこから夕方から夜まではずっと研究室にいるような生活をしています。
ー研究室には、どのくらいまでいるのですか?
これも日によりますが、遅いときは23時くらいになります。
ーけっこう遅くなるのですね。それだけ情熱をそそいでいる研究は、やはり楽しいものですか?
なかなかうまくいかないときは、心が折れそうになりますが、結果を出すことができたり、発表などをして評価されたときは、本当に嬉しいです。
ー蒲谷さんが、その中で一番やりがいを感じるときはどんなときですか。
やはり、その実験が成功したときですね。このデータならいける、というデータがとれたときは、すごく嬉しいです。
ー実験というのは、初めから、できそうだという前提で行っているわけではないのですね。
シミュレーション上では、ある程度はうまくいくのがなんとなく予想できるのですが、実際ロボットにプログラムをまわしてみると、なかなかうまくいかないということがあります。なぜうまくいかないんだろう、というその原因を、ひとつひとつ探していくという作業が多いです。
ー以前教授にインタビューしたときに、この学科の学生たちはオンオフの切り替えが上手だと、伺ったのですが、蒲谷さんはオンオフの切り替えをどのようにされていますか?
自分がオフになるのは、勝手にそうなってしまうことが多いのですが、オンへの切り替えというのはすごく意識しています。今日からやるぞ、と決めたら、それこそ時間も気にせず研究室にこもって、ワーッと没頭するようなタイプではあると思います。
ーそういうタイプの方はけっこう多いですか?
そうですね、うちの研究室はそういう人が多いと思います。
ーでは、蒲谷さんが、将来こうなりたいという、目標としているものは具体的にありますか?
どのような方面に就職したいということは、まだ決めていないのですが、研究で培ってきた、目標を立てる力ですとか、その達成に向かって努力していく力を生かせるような職に就いて、ずっと働いていきたいと思っています。
ー蒲谷さんにとって、システムデザイン工学科とは、一言で言うとどういう学科ですか?
幅広い分野を学びながらも、ひとつ、自分の専門を確立することができる学科です。
ー最後に、システムデザイン工学科を目指す高校生に向けて、メッセージをお願いいたします。
繰り返しになりますが、システムデザイン工学科は、とても幅広い分野を取り扱っています。その中で、必ず自分のやりたいことというのが、見つけられる学科だと思います。
慶應義塾大学大学院 理工学研究科
総合デザイン工学専攻 村上俊之研究室 小林 将大
次世代に向けた
エンジニアになるために
ー専攻はなんですか?
制御工学といって、主に人間の腕を模したロボットの制御についてです。それを所望の軌道に動かしたりですとか、あとは、介護分野にも使えるような、人とのインタラクションも考慮したロボットの研究も行っています。
ー実際どのように使うのですか?
今現在、実用化されているものは、ほぼ無いんですけれども、近い未来、介護分野や福祉分野で使えるロボットを作ろうと取り組んでいます。やはり人と触れることになりますので、堅い素材は使えませんし、またケガをしないようにする必要もありますので、安全でかつ安定したロボットを作るというのが、当研究室の研究です。
ーご自身の研究における目標はなんですか?
今模索している途中なのですが、バイラテラル制御といいまして、2 つのロボットアームのようなものを使った遠隔操作システムの研究の達成です。その遠隔操作システムというのは、遠隔手術ですとか、宇宙空間での作業にも応用できると期待されています。
ーどのようなところでそういった研究の成果物を発表しますか?
研究室では中間発表が年に数回あり、そこでは、近い研究をやっている5 研究室合同でグループを組んでおりまして、教授たちの前で英語を使って発表しフィードバックをもらう、そして次の研究に生かす、という流れです。もちろん、国内外を問わず、学会に論文を提出することもあります。
ー小林さんの将来の夢はなんですか?
ハッキリこれ、というものは、まだ探している段階なのですけれども、日本で物づくりの現場に携わっていきたいと考えています。できれば研究職に就いて、技術を社会のために生かしたいですね。
ー先日、田口教授にお話を伺ったところ、この学科は、オンオフを切り替えるのがうまい学生が多いということをおっしゃっていたのですが、小林さんはいかがですか?
私自身、スポーツがとても好きで、高校時代はバレーボールをやっていましたので、今でも週一回、日吉キャンパスの体育の授業を取って、学部生に混ざって体を動かしています。
ー学校にいる間はもうずっと研究をやられているんですね。
そうですね。ですので、先ほど申し上げたように、週1 回は日吉の体育で汗を流すというのがとても楽しみです。
ー高校のときから工学系の勉強をされていたのですか?
いえ、高校は普通科でした。
ーでは、理系の勉強ばかりをやっていた、というわけではなかった?
そうですね。ただ、物理を先行していましたので、理系に進むということは早い段階からから決めておりました。
ー色々と理系の学科がある中で、この学科を選ばれたのはなぜですか?
私の場合ですと、まず研究室を調べました。4 年生になったときに、どこの研究室に入りたいかなと考えたときに、もともと、ものづくりが好きでしたので、ロボットを作りたいなと思いました。そこで探した結果、現在私が配属されている村上先生の研究室が面白そうだったため、このシステムデザイン工学科を選びました。
ーこの学科には、どういった学生が向いていると思いますか?
もちろん、私のようにもともとこの研究室に行きたいと考えて入るのもアリだと思います。けれど、システムデザイン工学科は、熱流体系や建築系、制御工学系、あとはコンピューターサイエンスですとか、広く多分野を学べる学科です。幅広い分野を学んだうえで専攻を選べるという利点がありますので、むしろ今、進路を決めかねている、将来どういう研究をしたらいいのか、まだわからないという人にこそ、向いているかもしれません。
ー小林さんが研究をされていて、一番やりがいを感じるときはどんなときですか?
やはり、こういった研究分野は、実験結果が出ないと、どんなにいい理論でもその裏付けが取れていないということになってしまいますので、実験ありきのところがあります。ロボットを実験しますと、発散と言って、パラメーター調整によっては、暴走してしまうことが多々あるんです。ですので、そのパラメーター調整ですとか、他にも泥くさい地道な作業をやり続ける必要があるのですが、やっと所望の動きをしてくれたときは、本当に嬉しいですし、一番やりがいを感じるときです。
ー小林さんにとって、システムデザイン工学科は、一言で言うと、どういうところですか?
難しいですね(笑)。かっこいい言葉で言いますと、次世代に対応できるエンジニアを育てる学科です。
ー最後に、システムデザイン工学科を目指している、高校生に向けて、ひとことメッセージをお願いします。
高校生ですと、まだ自分が将来何をやるかを決められていない人も多いと思うんですけれども、システムデザイン工学科は、様々な可能性を秘めた学科なので、ぜひシステムデザイン工学科を志望してください。よろしくお願いします。